鉄炭だんごを海に投げる日とは、市民が主体となって海の環境を再生し、未来の漁場を育てる取り組みです。鉄と炭でできた「鉄炭だんご」を海に投入することで、水質改善や藻場の再生を促し、持続可能な漁業環境を市民の手で築いていく活動です。
🌊 鉄炭だんごとは何か?
鉄炭だんごは、鉄(Fe)と炭(C)を密着させて丸めた団子状の環境改善資材です。水中に投入すると、鉄イオン(Fe²⁺)が溶け出し、海水中のリン酸と化学反応を起こして赤潮やアオコなどの有害プランクトンの発生を抑制します。また、鉄分は海藻の成長に不可欠であり、鉄炭だんごによって藻場(海藻が繁茂する場所)の再生が期待されます。
🐟 なぜ市民が海に投げるのか?
かつては山から川を通じて海へと鉄分が供給されていましたが、都市化や森林の荒廃によりその流れが滞っています。鉄炭だんごは、自然界の鉄分供給の仕組みを人工的に補う手段であり、これを市民が担うことで、地域の海を自らの手で守るという意識が育まれます。
たとえば、愛媛県宇和島市では、小学生や高校生が鉄炭だんごを手作りし、海に投げ入れる活動を行っています。教育と環境保全が融合した取り組みとして、地域ぐるみで未来の漁場づくりに参加しています。
🧪 科学的な効果と実験結果
宇和島湾で行われた実験では、鉄炭だんごを投入した水槽で以下のような効果が確認されました:
– 海藻(ウミブドウ)の成長促進:鉄炭だんごを入れた水槽では、海藻の質量が増加し、色味も鮮やかになった。
– リン酸濃度の低下:鉄炭だんごを入れた水槽では、リン酸濃度が1週間で大幅に減少し、有害プランクトンの発生を抑える効果が見られた。
– 効果の持続期間:鉄炭だんごの効果は約1~2週間で減少するため、月に2回程度の継続的な投入が推奨されています。
🗺️ 投入のタイミングと場所
効果的な投入には、潮の流れや地形の理解が不可欠です。宇和島湾のようなリアス式海岸では、波が穏やかで鉄炭だんごの成分が拡散しにくく、局所的な効果が得られやすいとされています。
投入のタイミングとしては、小潮の時期(半月の日)が最適です。大潮や急潮の時期は海水の動きが激しく、鉄炭だんごの成分が湾外に流出してしまう可能性があるため避けるべきです。
🌱 市民が育てる未来の漁場とは?
この活動の本質は、市民が主体となって海の環境を守り、育てることにあります。鉄炭だんごを海に投げるという行為は、単なる環境改善ではなく、地域の自然と向き合い、未来の漁業資源を育てる文化的な営みです。
また、子どもたちが参加することで、環境教育の実践の場となり、次世代に自然の大切さを伝えることができます。鉄炭だんごは、SDGs(持続可能な開発目標)にも通じる市民参加型の環境保全活動として注目されています。
🧭 これからの展望
鉄炭だんごの活用は、今後さらに広がる可能性があります。地域ごとの海洋環境に応じた投入方法の研究や、漁業者・教育機関・自治体との連携によって、より効果的な漁場再生が期待されます。
市民が自らの手で海を育てる「鉄炭だんごを海に投げる日」は、未来の漁場を守る第一歩。この小さな団子が、海の命をつなぎ、地域の暮らしを支える大きな力となるのです

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