21:鉄分ゼロの海は何を失ったのか?

鉄分ゼロの海は「生命のゆりかご」としての力を失い、沈黙する海とは“生物の活動が極端に乏しい海”を意味します。これは鉄分不足によって植物プランクトンが育たず、食物連鎖が崩れることで起こります。

🌊 鉄分ゼロの海が失ったもの

– 植物プランクトンの繁殖力  

  鉄は光合成に必要な酵素の働きを助ける必須栄養素。鉄分がないと植物プランクトンが育たず、海の一次生産が止まります。

– 食物連鎖の基盤  

  植物プランクトンが減ると、それを食べる動物プランクトン、魚類、海鳥、クジラなどの生物も減少。海の生態系全体が沈黙します。

– 炭素吸収能力  

  植物プランクトンは大気中のCO₂を吸収して海底に沈める役割も担っています。鉄分がないとこの炭素循環も止まり、地球温暖化にも影響します。

⚙️ 沈黙する海のメカニズム

1. 鉄分が海に届かない理由  

   – 森から川を通じて海に運ばれる「腐植酸鉄」が、ダムや護岸工事で遮断されてしまう。

   – 大気からの鉄分供給(黄砂など)が少ない地域では、海水中の鉄濃度が極端に低下する。

2. 鉄分が海水に溶けにくい性質  

   – 鉄は酸素を含む海水では水酸化鉄として沈殿しやすく、粒子に吸着されて除去されてしまう。

3. 鉄分がないとどうなるか  

   – 植物プランクトンが育たない → 動物プランクトンが減る → 魚が減る → 海が沈黙する。

🌱 鉄分を補う取り組み

– 「海の森づくり」プロジェクト  

  森で生まれた腐植酸鉄を海に届けるため、植林や河川の再生が行われています。

– 人工的な鉄分供給  

  一部の研究では、海に鉄分を散布することで植物プランクトンを増やし、CO₂吸収を促す試みもあります。

海の沈黙は、目に見えない鉄分の欠乏から始まります。鉄は微量でも海の命を支える「静かな主役」。このメカニズムを理解することは、海洋保全や気候変動対策にもつながります。

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