森のしずくが海に届くとき――鉄分がつなぐ命の旅路とは?
森から流れ出るしずくが、やがて海を潤す――この美しい自然の循環には、目に見えない「鉄分」が重要な役割を果たしています。鉄は、森と海をつなぐ命の架け橋。ここでは、鉄分がどのように森から海へと旅をし、海の生態系を支えているのかをわかりやすく解説します。
🌲森から始まる鉄の物語
森の地面には、落ち葉や枝が積もり、微生物によって分解されていきます。この過程で生まれるのが「フルボ酸」という有機物質です。フルボ酸は鉄と結びつきやすく、土壌中の鉄と結合して「フルボ酸鉄」となります。
このフルボ酸鉄は、雨によって川へと流れ出し、河川を通じて海へと運ばれます。つまり、森のしずくには鉄分が含まれており、それが海へと旅をするのです。
🌊海で鉄分が果たす役割
海の生態系を支えるのは、植物プランクトンや海藻などの光合成生物です。彼らが成長するためには、窒素・リン・ケイ素などの栄養塩が必要ですが、それらを吸収する前に「鉄分」が不可欠です。
しかし、海水中の鉄は粒子状で存在しており、そのままではプランクトンや海藻が吸収できません。そこで登場するのが、森から運ばれてきた「フルボ酸鉄」。この形ならば、プランクトンや海藻が鉄分を吸収できるため、光合成が活発になり、海の生態系が豊かになるのです。
🐟鉄分が育む豊かな海
鉄分によって植物プランクトンが増えると、それを食べる小魚や貝類が育ち、さらにそれらを捕食する大型魚も集まります。こうして、鉄分は海の食物連鎖の起点となり、漁業資源の豊かさにも直結するのです。
実際に、北海道の襟裳岬では森林伐採によって鉄分供給が減少し、海藻が枯死、漁獲量が激減しました。その後、植林活動によって森を再生させたことで、海の生態系も回復したという事例があります。
🏞森と海のつながりを守るために
近年、護岸工事やダム建設などによって、森と川、そして海のつながりが寸断されるケースが増えています。その結果、フルボ酸鉄の供給が減少し、海の栄養不足が深刻化している地域もあります。
このような状況を改善するために、「森は海の恋人」運動などの植林活動が全国で展開されています。森を守ることは、海を守ることにつながるのです。
🔁自然の循環と鉄分の旅
森から海へと流れる鉄分は、海の生態系を育み、海から蒸発した水蒸気は雨となって再び森に降り注ぎます。この循環こそが、地球の命のリズムであり、鉄分はそのリズムを支える重要な要素なのです。
鉄は人間の体にも不可欠な元素であり、血液中のヘモグロビンに含まれて酸素を運ぶ役割を担っています。つまり、鉄は森・海・人間をつなぐ「命の元素」とも言えるでしょう。
🌱まとめ:森のしずくが海を育てる
– 森の土壌で生まれたフルボ酸鉄が、川を通じて海へと運ばれる
– 海ではフルボ酸鉄が植物プランクトンや海藻の成長を支える
– 鉄分が海の食物連鎖を起点となり、漁業資源を豊かにする
– 森と海のつながりを守ることが、自然の循環を維持する鍵
森のしずくが海に届くとき、そこには目に見えない鉄分の旅があり、命のつながりが広がっています。私たちが森を守ることは、海を守ること。そして、地球全体の命を守ることにつながるのです。

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