鉄粒子は気候変動において“敵”にも“味方”にもなり得る存在です。人為起源の鉄粒子は海洋のCO₂吸収を促進する一方で、大気加熱などの負の影響も持ちます。
鉄と気候変動の関係は、近年の研究で急速に注目されています。以下にその意外な接点を詳しく紹介します:
🌍 鉄粒子と気候変動の関係
– 海洋のCO₂吸収を促進する味方としての鉄
大気中の鉄粒子(エアロゾル)が海洋に沈着すると、鉄分が不足している海域で植物プランクトンの光合成が活発になります。これにより大気中のCO₂が吸収され、地球温暖化の抑制に貢献します。
– 人為起源鉄の重要性
製鉄所や化石燃料の燃焼によって放出される鉄粒子は、自然起源の黄砂などとは異なる低い鉄同位体比を持ち、海洋に溶け込みやすい性質があります。これにより、海洋の一次生産を促進する可能性が高いとされています。
– 敵としての側面:大気加熱効果
一方で、黒色酸化鉄(マグネタイト)などの鉄粒子は光を吸収して大気を加熱する効果を持ち、特にアジア地域ではブラウンカーボンと同等以上の加熱効果があるとされ、温暖化を促進する可能性があります。
🔬 最新研究の成果
– 東京大学の研究では、製鉄所周辺で採取したエアロゾルから燃焼起源鉄の同位体比を分析し、海洋への鉄供給源としての寄与を評価しました。
– 名古屋大学の研究では、人為起源鉄の大気中量が従来の推定より約8倍多いことが判明し、気候モデルへの影響が再評価されています。
🧭 今後の展望
– 鉄粒子の発生源や沈着量をより精密に把握することで、気候変動予測の精度向上が期待されています。
– 人為起源鉄の排出量が減少した場合、大気質の改善と冷却効果が見込まれる一方、海洋のCO₂吸収能力が低下する可能性もあるため、バランスの取れた政策が求められます。
つまり、鉄粒子は気候変動において二面性を持つ存在であり、その影響を正しく理解し、活用することが今後の地球環境対策において重要です。

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